上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
老朽マンション 建て替え32棟止まり
円滑化法制定5年 住民合意・費用が壁
老朽マンションの建て替え促進を目的に2002年6月に制定されたマンション建て替え円滑化法を利用して建て替えられたのは、全国で10件32棟にとどまっていることが、国土交通省の調査でわかった。
手続きが進行中なのも21件59棟だけで、建て替え促進の「切り札」と考えていた国などの期待は裏切られた。老朽マンションとされる築30年以上の建物は全国で約1万棟56万戸に上り、耐震性に問題のある住宅も多い。制定から5年を迎え、建て替えだけに頼るのではなく、補修などを含めた対策の抜本的な見直しが急がれる。
調査は、国交省が都道府県を通じて3月末現在で実施。建て替え完了・進行中31件(2293戸)のうち24件を首都圏が占め、ほかも仙台、大阪、広島、福岡各市など大都市に集中する。複数棟の一括建て替えは11件あり、最大は東京都大田区の8棟368戸。
円滑化法制定前は、住民が区分所有法に基づき建て替えを決議した後の明確なルールはなく、開発業者にいったん土地と建物を売却してしまうか、住民自身で資金集めや反対者との所有権移転交渉をするなどしていた。
しかし、開発業者が採算が取れないと途中で手を引いたり、住民の立場に法的根拠がないため反対者との交渉がこじれて裁判になったりするケースが相次いだ。阪神大震災でも多くの被災建物で建て替えが遅れる原因となった。
これらの問題を解消する切り札として制定された円滑化法は、決議後のルールを定め、様々な権限を持つ法人「建て替え組合」を住民が設立できるようにした。組合は反対者に所有権の売り渡しを請求でき、反対者は時価での売却が義務付けられ、速やかに権利移転ができるようになった。
ただ、国の思惑通りにはならず、国交省は理由として〈1〉住民の合意形成が難しく、円滑化法とセットとなる区分所有法が定める、全体で8割以上の賛成などの条件を超えられない〈2〉建て替え費用が多額で都市部などの好立地を除いて工面できない――ことを挙げる。
10年後には、築30年以上のマンションは現在の3倍の約3万棟になる見通しだ。建て替えが進まないと1981年以前の古い耐震基準で建てられた建物が大量に残されて危険な上に、高齢化時代を迎えるのにバリアフリーに対応できない、住民が減って地区が荒廃するなどの問題がある。
専門家からは〈1〉住民の賛成条件を引き下げる〈2〉危険な建物から退去させる行政の権限を強化する〈3〉費用が少なくて済む補修で済ませる方法を検討する――などの対策が提案されている。